研究課題
細胞核における核内染色体は高度に区画化された「染色体テリトリー(CT)」を持ち、染色体の物理サイズ、遺伝子密度、遺伝子発現状態などに関連して、その核内配置が規定されているものと考えられている。CTのダイナミクスを探る一環として、主としてクロマチン間領域に存在する核タンパク質とCTとの間で、空間的にどのような相互作用が生じているかを明らかにすることを目的とし、核タンパク質とCTおよび特定遺伝子領域の同一核内での可視化プロトコールの開発を行った(H17-18年度、本特定領域研究)。この成果に基づいて、本研究では、CTとタンパク質だけではなく、RNA分子を主体とした核内小分子群を対象とし、3D-FISH法をベースとした同時可視化系の開発を目指している。まず、RNA分子群の細胞内局在の全体像を把握するために、哺乳類細胞を材料としてRNA特異的染色試薬であるsyto RNA select用いて、間期および分裂期における局在と動態を調べた。その結果、1)分裂期細胞では染色体周辺部にRNA分子群が高濃度に局在すること、2)間期核ではRNA polymerase IIおよびKi-67と共局在するRNA分子群の頻度が高く、HP1と共局在する頻度が低いこと、3)RNA分子群の多くの成分が核内タンパク質と高次構造体を形成している可能性があること、が明らかにされた。RNA分子群のうち、今後はCTの空間配置トポロジー制御に関与するものに着目し、RNA分子群とCTおよびタンパク質の同時可視化系プロトコールの開発を通して、細胞核内をシステムとして動かしている様々な小分子群の核内オペレーターとしての本態を明らかにしていく。
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Molecular Cell 26
ページ: 349-365
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