生物時計とは生命活動を地球上の昼夜交替のサイクルに適応させるための分子機構であり、酵母のような一部の例外を除けば、ほぼ全ての真核生物が備えている。真核生物の生物時計を構成する時計タンパク質の多くが核局在のタンパク質(大多数がDNA結合モチーフをもつ)であり、量的・質的に日周変動している。細胞質で翻訳された時計タンパク質は、時刻依存的に核へ移行し、核内で転写因子として働くと考えられているが、時計タンパク質の細胞内の時空間的挙動はほとんど未解明であり、また、時計タンパク質の核移行の制御機構も未解明である。さらに、核へ移行した時計タンパク質のリズム発振機能も未解明である。 本研究課題では、緑藻および高等植物で我々がクローニングした時計遺伝子に焦点を絞り、解析を進めている。すでにクローニングが完了した高等植物に加え、今年度は緑藻クラミドモナスで時計遺伝子(時計タンパク質)を同定することに成功した。その結果、緑藻の生物時計は高等植物の時計と似たタンパク質と、緑藻独自のタンパク質からなる時計であることが明らかになった。今後、緑藻と高等植物の時計タンパク質の核移行および核内での挙動を詳細に調べることで、時計タンパク質が進化上保存している核内での役割を明らかにできると期待される。
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