研究課題
計画に基づいて研究を進めたが、特筆すべきものとして以下の成果を挙げる。DNA損傷時における複製フォーク進行にPARP-1が与える影響:(1)PARP-1が核内において複製タンパク質と相互作用していることを示した。また、DNA複製の現場である複製fociとPARP-1が共局在することを示した。このことから、PARP-1はDNA損傷が無い状態ですでに複製フォークに局在していることが示唆された。(2)DNA複製依存的二本鎖切断が生じた時、PAEP-1が複製フォークの進行速度に影響を与えることを見出したが、それには二本鎖切断修復タンパク質が関与していることを示した。すなわち、DNA損傷部位に複製フォークが衝突した時、二本鎖切断修復機構としてRad51やXRCC3による一連の相同組換え機構が機能するが、相同組換え活性が複製フォークの進行を調整しており、PARP-1はもう1つの二本鎖切断修復機構である非相同末端結合を阻害することで相同組換えが優先的に起こることを保証していることを示した。DNMT1阻害剤5-aza-2'-deoxycytidineによるDNA損傷誘導機構:(1)DNMT1阻害剤5-aza-2'-deoxycytidine処理により、DNA複製依存的にDNA損傷が誘導されることを見出した。5-aza-2'-deoxycytidineを取り込んだDNAとDNMT1とのクロスリンク複合体に複製フォークが衝突することによりDNA損傷が誘導されることが示唆された。(2)複製鎖の動態を一分子のDNA上で解析できるDynamic molecular combing法を用いて、5-aza-2'-deoxycytidine処理により複製フォーク進行速度が遅延することを初めて直接的に示した。また、fluorescence in situ hybridization(FISH)法を併用した解析により、5-aza-2'-deoxycytidine処理によりDNA損傷が高頻度に誘導されるマウスセントロメア周辺領域において複製フォーク進行速度が遅延していることを見出した。
すべて 2008 2007
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Bioscience, Biotechnolgy, and Biochemistry 72巻
ページ: 630-635
三重大学生物資源学部紀要 34号
ページ: 1-14