研究概要 |
iPS細胞の出現後、作製技術の開発には目覚ましいものがある。しかし、クロマチン構造が親密に関係する分子機構の解明はほとんど成されていないのが現状である。 1) iPS細胞の出現におけるケミカルコンパウンドの効果 iPS細胞の作製効率を上げる小分子ケミカルコンパウンドとして以下のものを含むいくつかが報告された。その検証によりクロマチン分子機構の解析を試みた。VPA(Histone deacetylase inhibitor) ; 遺伝子を全体的にアセチル化しオープンクロマチン構造に寄与すると推測された。マウス初代繊維芽細胞(MEFs)を処理すると、副作用で細胞が死滅した。BIX(G9a inhibitor) ; ヒストンメチル化酵素であるG9aの阻害剤で細胞を処理すると、副作用で細胞が死滅した。MEK & GSK3b inhibitors(pluripotent ground state) ; 効果的に再プログラム化を誘導すると言われているが、特殊な培養液との組み合わせが必要であり、その準備を行っている。 2) Nanogの再プログラム化における役割 MEFsが外来性の因子、Oct4, Sox2, Klf4(c-Myc)によりiPS細胞に再プログラム化される過程における多能性コア因子Nanogの役割を解析する目的で、Nanogの発現をinducibleに調整可能なトランスジェニックマウスの作製に成功した。今後、このマウスを用いて、体細胞のiPS細胞化におけるNanogの役割を明らかにする予定である。
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