膨大な遺伝情報を担う遺伝子DNAはヒストン蛋白質と結合してヌクレオソームを形成し、幾重にも折り畳まれて核に存在する。高次のクロマチン構造の要となるリンカーヒストンHlには、複数のバリアントが存在し、ヒトも含めた脊椎動物では全能性を持っ受精卵では、卵母細胞由来の胚性リンカーヒストンH1が存在し、その後発生が進んで受精後の転写が開始される時期に一般の体細胞型ヒストンH1に置きかわる事が近年明らかにされた。受精卵に唯一存在する、胚性リンカーヒストンH1は、脊椎動物の間で保存されており、一般の体細胞型ヒストンH1に比較して、酸性アミノ酸が多く含まれ、DNAへの結合が弱く、ほどけたクロマチンファイバーを形成してする事が予想される。これまでに私達はリンカーDNAを含むクロマチン最小単位、ジヌクレオソームの次元で、胚性リンカーヒストンH1がクロマチンダイナミクスに関して特殊な構造と機能を有している事を示して来た。本年度は高次のクロマチンファイバーの次元で、ヒストンH1バリアントがクロマチンの構造と機能に明確な違いを生み出すのか検証するために、特殊なヌクレオソームポジショニング配列をつなぎ合わせたDNAを用いて、ヒストンH1を含む30nmファイバーレベルのクロマチン再構成系を確立した。再構成したクロマチン鋳型に、さらに異なるリンカーヒストンバリアントをリンカーヒストンシャペロンを用いて加え、完成したクロマチンファイバーの高次構造を、分析型超遠心機を用いた沈降係数測定によって比較検討した。その結果、リンーヒストン濃度依存的に異なった構造変化を生み出すことが判明した。
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