(主たる研究計画での成果)研究代表者らは以前の研究から、がん細胞の悪性形質を支配する染色体外遺伝因子(DM)が細胞から排出されるとがん細胞が脱がん化すること、その排出には微小核への取り込みが関与すること、微小核への取り込みには細胞周期進行に伴うDMの極めて特徴的な細胞内動態が原因であること、等々を示してきた。また、独自な技術を用いて生細胞内でDMを可視化することができた。本研究期間には、それまで必要不可欠な実験であると認識されながらできないでいた実験、すなわち、長時間におよぶ時・空間的に高解像度なタイムラプス実験を集中して行うことにより、DMや染色体断片のような異常クロマチンの動態と微小核への取り込み、および微小核内容物がどのように排出されるか、という問題について、時間的因果関係のもとに明確にすることができた。中でも最も重要な点は、DMが間期核から細胞質に移動する場合があること、DMを濃縮した微小核が細胞質膜のブレッビングにより細胞外に放出される場合があること、細胞外に放出された微小核を介して、悪性形質を運ぶDMが細胞間で水平伝播される可能性があること、を見いだした。そのような成果を含めて重要な成果が多数得られたが、それらは現在整理して順次投稿準備中である。 (その他、基盤となる領域での成果)主たる研究計画は、染色体外遺伝因子の細胞内動態および、それが媒介する遺伝子増幅の機構、についての代表者らの独創的な研究を基盤としている。本研究期間内には、そのような基盤となる研究に関しても大きく進展した。
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