1. ヒストン脱メチル化酵素およびヒストンメチル化酵素の発現パターン 心臓の発生過程で、Jmjファミリーなどのヒストン脱メチル化酵素およびヒストンメチル化酵素、さらに細胞周期調節因子、分化調節因子の発現パターンを詳細に検討した。その結果、ヒストン脱メチル化酵素およびヒストンメチル化酵素と細胞周期調節因子の中のアクセル分子の多くが、生後一過性の発現増加を示し、その後、減少に転じるという類似した発現パターンをとることがわかった。同様の発現プロフィールの検討をマイクロアレイを用いて、すべての遺伝子に拡大して行ったところ、上記のパターンをとる遺伝子群は全体の一部で、その中に細胞周期のG1期以降の進行に関わる因子が多く含まれることが判明した。このことから増殖制御におけるヒストン修飾の寄与が示唆された。 2.増殖停止と分化の維持におけるヒストンメチル化および脱メチル化の意義 (1)で予想された増殖制御におけるヒストン修飾の寄与を解析するため、ヒストン脱メチル化酵素を心筋で発現するトランスジェニックマウスおよび二つのヒストンメチル化酵素の心筋特異的ノックアウトマウスを作成した。前者からヒストンメチル化修飾が心筋の増殖制御に重要であることを示唆する結果を得た。また、後者から、この二つのヒストンメチル化酵素がオーバーラップした機能をもつこと、両者をノックアウトすることにより、胎生致死となることが判明した。現在、その死因となる異常の解析を通じて、ヒストンメチル化の意義を検討中である。
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