本研究では栄養素のリサイクル機構を通して植物の環境応答性と深く関わる葉緑体タンパク質の分解機構について、主に葉緑体、液胞、および膜輸送系の動態の面から明らかにすることを目的とし、本年度は以下の3項目について実験を行った。 (1) 様々な生長段階、環境条件下におけるRCB経路のモニタリング 先に確立した葉緑体移行GFP発現シロイヌナズナと共焦点レーザー顕微鏡を用いたRCBの生葉における可視化法を駆使して、RCB経路の発現を解析した。RCBは自然老化、個葉暗処理により誘導される老化時に多く見られた。一方、展開中の若い葉や最上位葉ではその量はわずかであった。 (2) ストロミュールとRCB形成の関連性 RCBの形成、蓄積が全く見られないatg変異体では、ストロミュールが高頻度で出現することが確認された。また野生体におけるRCBの出現と同様に、atg変異体におけるストロミュールは自然老化、個葉暗処理により誘導される老化時に多く見られ、ストロミュールとRCB形成の関連性が強く示唆された。 (3) atg変異体における葉緑体及び主要葉緑体タンパク質の消長の実態解析 atg変異体では野生体と比較して老化時のクロロフィルの減少が早く起こっていた。一方、Rubiscoについては老化初期に減少速度が遅延するものの、老化過程全体では野生体と同様の減少速度を示した。またatg変異体では葉緑体数は老化後期まで一定レベルに保たれていることがわかった。
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