本研究では植物の環境適応と細胞・オルガネラ分化の研究対象として特に液胞と細胞骨格に着目し、分化・形態形成、細胞分裂周期、環境応答の各過程でのそれらの動態をリアルタイムで観察するとともに、得られた画像情報から独自開発の立体画像解析ソフトウェアを用いて、時空間的かつ定量的解析を行っている。多様な構造をもつ液胞をはじめとする細胞内構造の動的な構造変化を、細胞骨格および遺伝子発現との関連で解析することで、植物細胞の形態形成・制御をベースとした成長・分化および環境適応に伴う細胞内構造の機能、生理的意義や相互作用を明らかにしていくことを目指している。 本年度は主に、以下の2つのアプローチによりアクチン繊維の動態を検討し、気孔開閉時や細胞質分裂時における機能解析を行った。1)孔辺細胞アクチン繊維の立体的配向の解析: 気孔の開閉に関するアクチン繊維の機能解析を行うべく、GFP-ABD2により可視化したシロイヌナズナ形質転換体を作出し、その共焦点像からアクチン繊維の配向を定量的に解析する手法を考案した。それにより、気孔開口時にアクチン繊維が放射状に配向して閉口時にはランダム化することなどが分かった。アクチン繊維の分布や配向をさらに詳細に明らかにするためには立体情報の理解が不可欠だが、光学顕微鏡像から細胞骨格系の立体再構築を行う有効な方法は確立していない。そこで、孔辺細胞アクチン繊維の立体的配向の解析を目的として、連続光学切片から細胞骨格の立体再構築を行う方法を検討した。2)タイムラプスイメージングによる細胞板の発達におけるアクチン繊維の機能解析: アクチン繊維をGFP-ABD2で可視化したタバコBY-2細胞の細胞板を蛍光試薬FM4-64により染色し、両者の動態をタイムラプスイメージング法により解析した。その結果、細胞板形成の初めにはアクチン繊維は赤道面には局在せず、娘核近傍から細胞板の方向に向かってアクチン繊維が出現し、徐々に細胞板を縁取るように移動することが明らかになった。
|