研究課題
植物細胞におけるプラスチドの動的変化において、形態的に最も大きな変化は、チラコイド膜やプロラメラボディなどの内膜組織の形成や消失である。我々は、シロイヌナズナのプラスチドの内包膜と外包膜に2つの主要な糖脂質合成系が存在し、それぞれが、光、栄養条件などの外的環境や、植物ホルモンなどの内的因子によって異なる制御を受けているという新しいモデルを提唱した。本研究では、このような異なる経路を介したプラスチド膜脂質の生合成制御がプラスチドの分化そのものにどのような形で寄与しているかを明らかにすることを目的として研究を行う。シロイヌナズナリン欠乏条件下のmgdl-2変冥体について脂質分析を行ったところ、MGDGの蓄積は認められなかったが、DGDGが顕著に蓄積していることがわかった。また光学顕微鏡観察により、プラスチド内にドット状のクロロフィル蛍光が認められた。電子顕微鏡観察の結果、部分的なチラコイド膜の発達が認められた。また、クロロフィルの蓄積と一致して、クロロフィル合成系遺伝子の発現とLHCタンパク質の蓄積も認められた。一方、弱い緑化とチラコイド膜の発達が認められるにもかかわらず、PAMによる光合成活性の解析においては、光合成活性は検出されなかった。以上の結果から、mgdl-2変異体のジン欠乏条件におけるDGDGの蓄積は、外包膜の糖脂質合成経路の活性化により引き起こされたものと考えられる。また、リン欠乏条件め外包膜の糖脂質合成経路の活性化により、MGDGの蓄積はほとんど認められなかったことから、外包膜の糖脂質合成経路はDGDGの合成に特化しているものと考えられる。また今回の結果、DGDGの増加により、クロロフィルの蓄積やチラコイド膜の発達がある程度認められたことから、これらに関しては、MGDGは必須ではないことが判った。一方、光合成活性が全く検出されないことから、MGDG自身が光合成活性の発現に必須であると考えられる。
すべて 2008 2007
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件)
Proc. Natl, Acad. Sci. USA 104
ページ: 17216-17221
J. Biol. Chem. 282
ページ: 27792-27801
FEBS Lett. 581
ページ: 5475-5479
Plant Physiol. 144
ページ: 1039-1051
Plant Cell Physiol. 49
ページ: 135-141