本年度は、植物ホルモンサイトカイニンによるオルガネラ分化の制御機構を解析する目的で、サイトカイニン受容体に依存した情報伝達機能の分子メカニズムの解析に焦点をあてた。特に、サイトカイニン応答性転写因子であるB型ARRに関する遺伝学的解析を行った。 イロイヌナズナにはサイトカイニン応答性転写因子ARR遺伝子が少なくとも7種類有る(ARR1、ARR2、ARR10、ARR11、ARR12、ARR14、ARR18)。これらの遺伝子のうちでサイトカイニン情報伝達に最も重要な働きをしている遺伝子を遺伝学的に特定することを試みた。具体的には、これら遺伝子の機能欠損アリルを揃え、それらを色々組み合わせることにより各種の多重変異体を作成した。これらの変異植物体のうちでサイトカイニン情報伝達系が最も重篤に損なわれている変異体を検索した。その結果、ARR1、ARR10、ARR12の三種類に遺伝子を欠損させるだけでサイトカイニン情報伝達系が大きく損なわれることが明らかになった。 以上の解析から、AHK2/3/4/→AHP1/2/3/5→ARR1/10/12からなるサイトカイニン情報伝達基本経路の存在が明らかになった。従って、他の4種類のARRは植物の発達段階あるいは器官特異的に働いていることか示唆された。以上の結果は、サイトカイニン情報伝達機構に依存したオルガネラ分化を解析する為の基盤知識となる。
|