研究概要 |
頂芽切除前後のエンドウの茎からプラスチドを調製し、両プラスチドに含まれるタンパク質で量が変動するものを、iTRAQ法を用いた質量分析比較プロテオーム解析により検索した。2,000以上のペプチドについて増減を解析した結果、ほとんどのタンパク質は頂芽切除前後で2倍程度の増減しかしていなかった。頂芽切除後3倍以上増加するペプチドは15本、また1/3以下に減少するものは6本見いだされた。これらの中には、Cu-Zn-superoxide dismutaseがあり、茎が切り取られたことによる傷害によって誘導された可能性が考えられる。また、いくつかのタンパク質はある画分に核が混入したことにより増減が変化したように見えたものもあった。同様に緑化の進んだ茎から調製した画分からは、RuBisCOが増減するタンパク質として検出されることもあり、試料調製の重要性が再確認された。検出できたトリプシン消化ペプチドは2,000以上であるが、想定されるペプチド数から考えると10-20%程度と思われる。これらのペプチドを解析した結果、増減が検出できたものは比較的量の多いものしか検出できていないように思われた。これまでの解析から、当初予想していた以上に頂芽切除前後の茎プラスチドで変動のあるタンパク質が検出できていない。問題は、本当に変動のあるタンパク質が少ないのか、あるいは変動のあるタンパク質はあるが、存在量が少なくて検出できていないのか、この点を明らかにする必要がある。本来、ポジティブコントロールとなるべきIPTタンパク質の変動を、MS解析でモニターできるようにすることが、必須である。実験系を確認する意味で、オーキシン処理したDR5 promoter : : GUSシロイヌナズナのGUSタンパク質の増加をiTRAQ法で検出すると、ウエスタンブロット法の検出感度よりもやや劣る程度の感度であった。
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