本年度は、環境変化によるプラスチド分化・傷害情報を核に伝達してプラスチド関連遺伝子の発現を調節する、プラスチドシグナル伝達機構に焦点を当てて研究を進めた。具体的には、以下の5点について研究を進めた。(1)新奇gun変異体12候補について遺伝学的解析を行い、そのうち一つの遺伝子座については、4番染色体下腕に位置することを見いだした。現在更に領域を狭める実験を行っている。(2)光酸化ストレスによってプラスチド分化が阻害された植物において、テトラピロール合成中間体が蓄積しないにもかかわらず、テトラピロール合成能は充進していることを見いだした。(3)また、プラスチドシグナル伝達に関わるgun1変異体ではこの亢進が起こらないこと、逆にgun4およびgun5ではより強い亢進が起こることを見いだした。現在、この亢進現象の分子機構を明らかにする実験を進めている。(4)GUN5/CHLHがアブシジン酸(ABA)受容体であると報告されているため、gun5変異体アリル22種類を用いてABA感受性を調べ、gun表現型とABA感受性の相関を検討した結果、それらの間に弱いながらも正の相関性が見られることが分かった。(5)また、ABAによるプラスチドシグナル伝達への影響を調べたところ、予備的結果ではあるがABAがプラスチドシグナル伝達を抑制することを示唆する結果を得た。現在、幾つかの条件で結果が再現するか検定中である。
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