カタラーゼは、真核生物に共通して存在するペルオキシゾームに大量に集積する酵素である。しかし、その遺伝子発現の調節機構や、ペルオキシゾームへの輸送機構についてはほとんどわかっていない。本研究では、カタラーゼのペルオキシゾームへの輸送機構を明らかにすることを目的とした。 これまでの研究で、カボチャカタラーゼのペルオキシゾームへの輸送シグナルについて調べた結果、多くのペルオキシゾームタンパク質が持つC末端(PTS1)、またはN末端(PTS2)の輸送シグナルとは異なるカタラーゼに特異的な輸送シグナルが存在することが示唆された。すなわち、C末端から上流の-13から-11位のアミノ酸QKLが、内部PTS1様配列としてペルオキシゾームへの輸送に必要なシグナルである可能性が示された。 本研究では、カボチャカタラーゼで輸送シグナルとして示唆されたQKL配列が、生物種が違っても機能するのかどうかを調べるために、シロイヌナズナを用いてカタラーゼのペルオキシゾームへの輸送シグナルについて調べた。その結果、カボチャカタラーゼと同様に、シロイヌナズナにおけるアミノ酸配列QKLが内部PTS1様配列として機能していることが示された。しかし、QKLのみでは輸送されず、QKLのN末端側のアミノ酸配列も輸送に必要であることが示唆された。一方、シロイヌナズナカタラーゼのヘム結合部位変異体を作成し、GFP融合タンパク質の細胞内局在を観察したところ、細胞質に蛍光が観察され、ペルオキシゾームへの輸送が阻害された。シロイヌナズナにおいて、カタラーゼのペルオキシゾーム輸送にはヘムとの結合が必要なことが示唆された。
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