分化全能性は植物が示す特徴的な形質の一つである。緑色に分化した植物細胞が、脱分化過程を経て再分化する際に、その細胞内の色素体は、葉緑体からプロプラスチド、さらに再び葉緑体へと変換する。これまでに、ゴルジ体に局在する受容体型キナーゼ(CES101)、さらには分泌経路に局在すると予想されるタンパク質(CES102)の機能亢進により、プロプラスチドから葉緑体への分化誘導能が確認された。そこで、それらの遺伝子の機能をポストゲノム的解析手法で明らかにすることにより、分泌経路を介した色素体の分化制御メカニズムを分子レベルで明らかにすることを目的としている。 機能亢進によりプロプラスチドから葉緑体への分化誘導を示したシロイヌナズナ変異体について遺伝子発現の変化をDNAマイクロアレイによる網羅的な検討を試みた。その結果、コントロールとなる機能亢進前の細胞における遺伝子発現量と比較して、特定の発現量を超えるものをリストアップしたところ、CES101で222遺伝子、CES102で347遺伝子が候補として検出された。そこで、これらの遺伝子について、両者での重なりを調べたところ、196遺伝子が共通であることが明らかとなった。この結果は、CES101で発現が顕著に上昇した遺伝子の中で、9割弱の遺伝子がCES102でも同様な発現傾向を示したことを意味する。以上の解析結果から、CES102はCES101の上流で機能していることが示唆された。
|