研究概要 |
前年度までの研究で,細胞膜に局在するQaSNAREのうち,SYP123は根毛細胞特異的に発現し,成長中の根毛の先端に特異的に偏在すること,SYP123を欠損した植物は根毛の伸長異常をきたすこと等を明らかにした。更に本年度は,SYP123の根毛先端部への偏在のメカニズムを明らかにすることを目的として,各種阻害剤の影響,FRAP法による膜動態の解析等を行った。その結果,SYP123の根毛先端への偏在は,アクチン繊維依存的に起こること,エキソサイトーシスとエンドサイトーシスのバランスによること,タンパク質の新生は必ずしも必要ではないことが明らかとなった。これらのことより,SYPI23は,アクチンを構成成分とする細胞骨格により根毛先端部分に輸送され,その偏在性はエンドソームと細胞膜とのリサイクリングにより維持されていることが示唆された。 また,花粉管の伸長は,根毛の伸長と同じく,植物における先端成長の代表的な例であり,その重要性から様々な研究が行われているが,SNAREに関する研究は,皆無である。我々は,花粉管の伸長課程においても機能しているSNAREがあるとの予測の元,アレイデータを解析し,花粉のみで発現しているSNARE,SYP124,SYP125,SYPBIを抽出し,それらの自己プロモーターでGFP融合タンパク質を発現するトランスジェニック植物を作出して,花粉管伸長時における細胞膜上におけるタンパク質の偏在性を解析した。その結果,SYP124とSYP125の両者は花粉管の先端部分に偏在するものの,SYP124は花粉管先端部のクリアーゾーンの直下に,SYP125は花粉管の最先端部分に偏在するという違いが観察された。一方,SYP131は花粉の細胞膜全体に均一的に局在し,目立った偏在性は観察されなかった。これらのことより花粉に特異的に発現する3種類のSNAREには機能的な使い分けが存在する可能性が示唆された。
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