研究概要 |
タバコ培養細胞BY-2から単離した小胞体(ER)画分に,GTPを加えるとチューブ状構造が形成される。この現象は,低濃度のBiotin-maleimide (BM)でER画分を処理することによって阻害された。ERチューブ形成はGDPを加えても起こらない。従ってチューブ形成にはGTP加水分解エネルギーが必要であることが推測され,GTPase活性を測定した。GTP添加後静置したサンプルでは,一定の低いGTP分解活性しか検出されなかった。しかし,スターラーでたえず撹拌し続けた,つまりチューブ形成に適した条件下では高い分解活性が検出された。またこの活性は,BMで処理したER画分では検出されなかった。従って,チューブ形成時において,GTP加水分解活性の存在が示唆された。一方このin vitroにおけるERチューブ形成には,"流れ"などの力が必要である。薬理学的解析から,この力は植物細胞内ではアクチン系細胞骨格によって発生していると考えられる。このことを明らかにするために,ER小胞や運動活性を有するミオシンを含んだ高速遠心後のサイトゾルとミクロゾーム画分を含む上清(S2画分)を使って,ERチューブの再構成を試みた。その結果,F-アクチンやATPが必要であること。そしてミオシンの活性阻害剤によりチューブ形成が抑制されることなどが明らかとなり,ミオシンの関与が示唆された。このS2画分にはミオシンVIIIとXIの2つのクラスのミオシンが含まれており,現在どちらのミオシンがチューブ形成に関与しているのかを調べているところである。またシロイヌナズナ培養細胞から,BY-2細胞と同様の方法によって調製したER画分でも,GTPを加えることによってチューブ形成が引き起こされることが確認できた。この系を用いて,レティキュロン様タンパク質を同定しているところである。
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