研究概要 |
オートファジーとは,細胞質成分を細胞内分解コンパートメントである液胞に輸送して分解する,真核細胞に普遍的な細胞内分解システムである,我々はシロイヌナズナにおいてオートファジーに必須なATG遺伝子群の果たす役割を解析してきた.その結果(1)オートファジーが老化の抑制に関与していること(2)ATG6遺伝子の変異が雄性不稔の表現型を示すことなどを明らかにしてきた. 本年度は,老化と病原体抵抗性に関わっていると言われているサリチル酸に焦点を当て,オートファジー能欠損植物における表現型との関与を検討した.サリチル酸をカテコールに転換する酵素遺伝子NahGを過剰発現させた植物,あるいはサリチル酸生合成,サリチル酸シグナリング系の変異体との二重変異体ではオートファジー不能植物の老化促進表現型が抑制された.一方で,老化に関与していると言われているその他の植物ホルモンに関わる変異株では表現型が抑制されなかった.また,NahGにより老化促進表現型が抑制された植物にサリチル酸のアナログBTHを添加するとその抑制は解除された.以上の結果から,オートファジー不能植物ではサリチル酸生合成以降のサリチル酸シグナリング経路が活性化していることが示唆された. オートファジーは細胞質タンパク質に加え様々なオルガネラ分解に関与している.そこで,ペルオキシソームあるいはミトコンドリア局在型GFPを発現させたオートファジー不能植物を用いてそれらのオルガネラの挙動を調べたところ,オートファジーが不能であるとペルオキシソームの数が野生型よりも増えているのが観察された.一方でミトコンドリアについてはあまり変化が見られなかった.オートファジーによるペルオキシソーム分解が老化を抑制する役割を持っているのかもしれない.
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