マウスの性行動は外界からのシグナルによって制御されている。外界からの分子シグナルは鋤鼻、嗅覚系で受容され、神経系を介して実際の性行動に反映されるが、外界からのシグナルだけでなく、ホルモン等内部のシグナル伝達システムによってもその行動は強くコントロールされている。我々が最近作製したmab2111ノックアウトマウス雄は包皮腺の形成異常および不妊性を示すことが明らかになった。このノックアウトマウスを用いてmab2111遺伝子によるマウス性行動の制御機構を解析した。 1. 性行動 鋤鼻感覚神経系(嗅覚系)はフェロモンの受容、シグナルの伝達に関わっていると考えられている。mab2111遺伝子の発現はマウス胎児の嗅上皮、嗅球、鋤鼻感覚器官、副嗅球、扁桃体、視床下部で確認される。これらの組織で機能している、あるいは発現が報告されているいくつかの遺伝子についてin situハイブリダイゼーションによってその発現の解析を行った。その結果上記の組織の形成に変わる遺伝子の発現パターンには異常が観察されず、鋤鼻感覚神経系(嗅覚系)の形成は基本的には正常に行われていると考えられる結果を得た。 2. 母性行動 ノックアウトマウス雌の授乳行動異常に関して、オキシトシンおよびオキシトシン授与体の発現に変化が観察されなかったため、乳頭刺激から視床下部への神経伝達系の形成、機能の解析を行っている。
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