研究概要 |
Mab2111ノックアウトホモ個体の雄は不妊性を示すが、ノックアウト雄精子を用いた試験管内受精が可能なことから、この不妊性は性行動の異常によるものと考え解析を行った。これまでのところマウンティング等の性行動に異常は観察されず、不妊の原因は明らかでないが、フェロモンの産生や精液の形成に関与することが知られている包皮腺の形成が不全であることから、これが不妊の原因である可能性が考えられる。一方、Mab2111ノックアウト雌は正常に妊娠・出産するものの、その新生仔は遺伝子型に関わらず24時間以内に全て死亡する。この新生児を生後直ちに仮親に与えると成体まで成長することから、仔の側に異常はないものと考えられる。この母親側の原因を解析した結果、Mab2111ノックアウト雌の母性行動は正常に見えたが、授乳の異常が観察された。Mab2111遺伝子の発現が授乳にかかわる視床下部および乳腺で確認されたことから、これらの組織についてノックアウトマウスを用いて解析を行った。ノックアウトマウス雌では乳腺および子宮の発達の遅れや乳頭の形成異常が観察された。これはエストロジェン等の性ホルモンの産生、受容に障害が生じているためと考えられる。また、授乳にかかわるプロラクチンシグナル伝達系のNpt2b, Stat5a, ERαといった遺伝子の発現が極めて低下していることも明らかになり、これらがノックアウトマウスにおける授乳不全の原因であると考えられた。
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