研究課題
我々は、発生過程に関与する細胞死に着目し、細胞死シグナルの生理的な機能を探索するためにショウジョウバエカスパーゼ変異体を作成し、その細部にわたる解析を行った。その過程で雄性外生殖器の形成不全が観察されたことから、この研究課題において「外生殖器形成不全を規定する遺伝子の同定」及び、「生殖器形成に関わるカスパーゼシグナルとその制御機構の探索」を基幹実験テーマに据え、性分化メカニズムの一端を明らかにすることを目指している。ショウジョウバエの雄性外生殖器は、雄の体内で観察される直腸を360度取り囲むように配置される射精管の形態から、発生過程において形成時に回転することが重要なステップとされているが、カスパーゼ阻害による雄性外生殖器の回転不全はこの段階においての回転が不完全となってしまうと考えられる。我々は本研究課題において、生きた個体を用いた生殖腺形態形成のイメージング解析法を確立し、観察を行った。その結果、カスパーゼが雄性生殖器と内部後腸の正常配置の為の回転運動制御に関与している可能性が示唆された。さらに、1細胞レベルの解像度でイメージング解析を重ねた結果、回転時の生殖器周辺では細胞死のみならず周辺細胞の積極的な運動が観察された(投稿準備中)。加えて、外生殖器の回転運動が見られる際のカスパーゼ活性をリアルタイムイメージングするために、当研究室で開発されたカスパーゼ活性インディケーターを発現するトランスジェニック個体を用いた。カスパーゼ活性化をモニターするプローブであるSCATを発現させた生きた個体を用いて、外生殖器形成過程をイメージングすることで、実際に「どこで」「どのタイミングで」細胞死シグナルが関与するのかを精力的に解明している(投稿準備中)。今回の申請で継続した解析を行うことによって、カスパーゼが生殖腺発生において果たす役割及び性分化メカニズムの一端を解明できると考えている。
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http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~genetics/index.html