研究概要 |
野生集団中の性転換個体、XX雄、XY雌出現に関する遺伝子の同定とその機能解析を通じて、メダカの性決定、性分化機構の解明を目指して研究を進めている。本年度の主要な成果は以下の通りである。 1)新潟市白根地区から得られたXX雄の原因遺伝子のさらなる探索を進めた。昨年までに、メダカ連鎖群8の190KBの領域に原因遺伝子が存在することが明らかになっていたが、本年、その領域の塩基配列をメダカゲノムデータベースから得て、その領域に存在する遺伝子を予測した。RT-PCR解析から、予測遺伝子のうち、性分化時に発現していたのは3遺伝子であること、さらにin situ Hybridizationにより、性分化しつつある生殖巣で発現しているのは1つであることが判明し、原因遺伝子の有力な候補がSox9bであることが明らかになった。変異個体のSox9bのアミノ酸コード領域の塩基配列には異常は認められなかったが、正常個体とXX雄個体の発現比較から、XX雄個体においてはSox9bの発現低下が認められた。以上から、Sox9bの発現量の低下により、精巣分化が誘導される可能性が示唆された。2)新潟市白根地区から得られたDMYの発現低下による雌出現に関わる遺伝子について、メダカのLG1-24の全ての連鎖群のマーカーを使って連鎖解析を行ったところ、従来から存在が示唆されていたLG2上の遺伝子に加えて、LG4上にも"性変更遺伝子"が存在することが明らかになった。 以上を含め、これまでの研究から、メダカ野生集団およびメダカとハイナンメダカの種間雑種の性転換個体の解析から、LG2,4,8,17上の遺伝子が性決定/性分化に関与していることが示されたことになる。
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