研究概要 |
哺乳類の個体の性分化は生殖腺の分化から始まるというのが性分化の大方の捉え方であった。しかし着床前に雄は雌より早く成長するという報告があり、この時期の雌雄の性分化を示唆しているかもしれない。我々は発生において雌雄差がいつ生まれるのかに興味を持ち、着床前の雌雄胚の遺伝子発現を比較することにした。しかし解析に用いた胚盤胞は見た目では雌雄の別を言い当てることはできない。そこで我々の研究室で独自に開発した性判別法を利用し胚盤胞の性を選別し、合計2000個の胚についてDNAマイクロアレイを用いて雌雄の遺伝子発現を比べた。これまでの解析から、着床前に既に雄と雌で遺伝子の発現が異なることを明らかにし、雌特異的な発現を示すホメオボックス遺伝子Rhox5/Pemは父親由来のX染色体から発現するゲノムインプリント遺伝子であることを明らかにした。今回新たに、既知の全遺伝子を解析できるアレイにより、より網羅的に雌雄の胚盤胞での遺伝子発現を比較したところ、新しくFat45遺伝子が雌特異的に発現することを明らかにした。この遺伝子のゲノム配列の解析を行ったところ、Fat45はファミリー遺伝子であり、非常に良く似た遺伝子群がクラスターを形成していることがわかった。次年度はFat45のより詳細な発現をRTPCR,in situ hybridiationなどの手法を用い解析すると同時に、Fat45およびRhox5の個体における機能解析を行い着床前の性分化の有無を明らかにしたい。
|