性決定機構がZZ/ZW型のツチガエルに着目し、性決定の分子機構の解明を目的として、W染色体上に存在する卵巣決定候補遺伝子(A2W3)の機能解析を行った。機能獲得実験として、受精卵に目的の遺伝子を導入するトランスジェネシスに取り組んだ。 前年度の実験の結果、CMVプロモーターはツチガエルでは発現誘導が局所的で弱いことから、本年度は、アフリカツメガエルのEF1αプロモーターの下流にA2W3遺伝子を接続し、メダカトランスポゾン(Tol2)RNAと一緒にツチガエル受精卵へ導入した。その結果、受精後36日まで生存した22匹のZZ幼生のうち、6個体で染色体への組み込みが見られ、そのうち、3個体で発現を確認した。この3個体の生殖腺はすべて精巣構造を示したが、1個体では生殖細胞がなく、他の一個体では中央部に卵巣腔に似た生殖腔が確認された。完全な性転換は誘導されなかったが、A2W3遺伝子による卵巣決定機能の可能性が残された結果となった。 一方、ツチガエルにおいて、性分化関連遺伝子SOX3の性連鎖が判明し、しかも、この遺伝子は受精後15日目がら、遺伝的ZW雌幼生の未分化生殖腺で高い発現を示すことがわかった。また、ツチガエルにはXX/XY型性決定機構を有する別の集団が存在し、この集団でSox3の発現を調べたところ、生殖腺の性分化開始後まもなくの間、今度は逆に雄の生殖腺で高いことがわかった。SRYの元祖遺伝子であるSOX3が、ツチガエルでは雌雄それぞれの性の決定に関与している可能性が示された。
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