研究概要 |
我々は、Drosophilaのsine oculis遺伝子のマウスホモログ遺伝子であるSix1とSix4のダブルノックアウトマウスの解析から、転写因子であるSix1とSix4が腎臓発生において協調的に働くことを報告した(Kobayashi, et. al., 2007)。さらに、このSix1/Six4ダブルノックアウトマウスでは、Y染色体を持つ遺伝学的には雄の個体において、雄から雌への生殖巣の性分化異常が、出生時において調べたところ高頻度(約85%)で観察された。一方、Six1単独のノックアウトマウスではこの性分化異常は観察されないことから、性分化過程においてもSix1とSix4が協調的に働いていることを明らかにした。我々の解析から、この生殖巣の雄性分化異常は胎齢12.5日頃の生殖巣から既に形態学的に観察され、さらに、雄性分化に関わる遺伝子群の発現を検討した結果、胎齢12.5日頃の生殖巣でのSf1/Ad4bp及びSox9の発現低下に起因すると推察された。また、そのような生殖巣は、形態的には若干小さいが、i)胎齢11.5日頃の生殖隆起には、後腸から腸間膜を通じて移動してきた生殖細胞が定着していること、及びii)Y染色体を持つ遺伝学的には雄の生殖巣に定着した生殖細胞が、雌性分化、つまり減数分裂過程に進んでいることから、単なる生殖巣の形成不全ではなく、雌への性転換を起こしたものと考えられる。この性分化過程において、Six1とSix4は、雌雄ともに生殖巣と中腎に発現していることがRT-PCRで確認された。その発現に性差は認められなかったが、生殖巣においてSix1とSix4が雄性分化に関わる遺伝子群の発現を直接的に制御している可能性、或は中腎において機能している可能性が考えられた。
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