研究概要 |
自然免疫における主要なエフェクターである抗菌ペプチドの殺微生物作用に関わる分子機構を明らかにするために、まず、ヒトのパネト細胞が分泌するαディフェンシンであるHD5を大腸菌遺伝子組換え発現系を用いて調製した。その殺菌活性を、われわれの確立したS. typhimuriumを用いた殺微生物アッセイを施行し確認した。さらに、合成HD5ペプチドおよび合成マウスパネト細胞αディフェンシ(cryptdins)を調整し、それらを用いて各種細菌に対する殺微生物活性の解析を行った。これらの結果、パネト細胞αディフェンシンでは、立体構造が活性化酵素に対する安定性を介して殺菌活性に関与している可能性を示した。 マウス小腸材料またはインフォームド・コンセントの下に得た新鮮小腸材料からわれわれの既報(Ayabe T etal., Nature Immunol 2000)に準じて小腸絨毛と陰窩を分離し、サルモネラ菌(S. typhimurium)、大腸菌(E. coli)または乳酸菌と共培養してパネト細胞分泌物を得た。得られたパネト細胞分泌物およびパネト細胞αディフェンシンを各種細菌に37℃で1時間曝露し、曝露群または非曝露群反応物の殺菌率を解析した。単離小腸陰窩と,S. typhimurium, E. coliおよび腸内常在細菌であるLactobacillusをex vivo培養したところ、検討したいずれの上清中においても殺菌活性を認めた。われわれの確立した小腸パネト細胞分泌系を用いた殺菌アッセイにより、パネト細胞における微生物認識機能と感染防御機能が示された。
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