本研究は、マラリアを「マラリア媒介蚊が有する寄生虫認識メカニズム」という着眼点から解析し、マラリア原虫-ハマダラカの相互作用の全体像を明らかにするものである。申請者は、ショウジョウバエを蚊の代替生物として用いることにより、蚊の体内における新規のマラリア原虫認識分子furrowedの同定に成功し、この遺伝子が蚊体内からのマラリア原虫の排除に働いていることを明らかにしてきた。本研究では、furrowed遺伝子産物が蚊の体内でどのようにマラリア原虫を認識し排除へと導くのか、その詳細を明らかにすることを目的として研究を行った。 大腸菌によるタンパク質発現システムを用い、組換えハマダラカFurrowedタンパク質を回収、精製した。マラリア原虫感染マウスの血液を培養することにより、マラリア原虫オーキネートを回収・精製し、組換えFurrowedタンパクを添加した培地で培養後、ウエスタンブロット法により、Furrowedタンパクのマラリア原虫オーキネートに対する結合能の評価を行った。その結果、Furrowedタンパクの補体様ドメインがマラリア原虫に対して結合能を有することを明らかとした。また、抗Furrowedタンパクモノクローナル抗体を作製し、マラリア原虫感染時におけるFurrowedタンパクの発現変動を、免疫染色により解析した。その結果、Furrowedタンパクはマラリア原虫感染血液の吸血時に平常時と比較し数倍量発現上昇することが明らかとなった。 以上の結果より、Furrowedはハマダラカにおけるマラリア原虫感染において、感染初期において直接的な原虫認識分子として機能することで、ハマダラカ体内からのマラリア原虫排除へと導いていることが示唆された。
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