研究課題
カンジダは、表皮、粘膜、口腔、食道、腸、肛門など人体の様々な部位に常在しており、抗がん剤や免疫抑制剤の投与、エイズの発症など免疫力の低下した患者に対して感染した場合には高い致死率を示し、患者数は現在も増加傾向にある。これらの病原真菌では、複数の因子が病原性に関与すると考えられており、未解明な点が多く残されている。治療の第一選択としては、抗真菌薬が用いられるが、抗真菌薬には4タイプしか存在せず、選択肢の少なさ、副作用、スペクトラムの狭さ、耐性化などに問題があり、新しい抗真菌薬の開発は病原性の解明とともに重要な研究課題である。このような状況の中、主な病原真菌について全ゲノムシークエンスが決定され、これらのゲノム情報を用いた応用研究が注目されている。我々は、Candida glabrataを用いて全遺伝子機能を解析し、病原真菌の普遍性を見いだすことによって(1)広域的な抗真菌薬の研究(2)常在性と病原性の研究(3)医学・工学的利用などの研究を展開するカンジダフェノムプロジェクトを立ち上げた。第1章では、全遺伝子(5,300)に対する遺伝子組換え株構築が、進行中である。第2章では、抗真菌薬の開発を目標に、本特定領域研究の研究課題として研究を進めた。これまで第2章では、まず病原性真菌およびヒトゲノムの情報を用い真菌に高く保存され、人には類似性の低い遺伝子である147の標的候補遺伝子を決定し、それら147遺伝子について、Tetプロモーターを各遺伝子のプロモーター領域に導入した株(tet株)を体系的に構築した。次にこれら構築したtet株を用いて様々な培養実験を行うことにより、各遺伝子抑制による生育抑制効果、その即効性や殺菌性などを定量的に解析した。そしてこれらの結果を基に、30標的候補に絞り感染実験を行った°実験では、各tet株をマウスの尾静脈より接種し、腎臓内における各tet株の定着数を測定した。その結果を踏まえ薬剤の標的候補の順位付けを行い、標的候補をさらに絞り込んだ。選出した標的に対して、これまでのペプチド設計の先導研究の結果を踏まえ、菌体内への取り込み機能の付加、標的特異性の強化を施した抗真菌ペプチドの設計および評価試験を行った。
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Future Microbiology 4
ページ: 171-179
日本医真菌学会雑誌 49
ページ: 281-286