研究概要 |
ニパウイルスはヒト高い致死率を示す新興感染症であり、現在でもインド、バングラデシュなどで、流行を起こしている。我々は、このニパウイルスのreverse genetics系の開発に着手し、世界に書きがけて確立に成功した。(PNAS,2006)。平成19年度は、ニパウイルスのアクセサリー蛋白の病原性発現への関与とその機能に着目し、研究を行った。ニパウイルスのアクセサリー蛋白はin vitroの細胞発現系実験で、IFN応答経路の阻害能を持つことが示されている。そこで、我々の開発したreverse genetics系を用いて、3種のアクセサリー蛋白(V、C、W蛋白)を単独、あるいは組み合わせて欠損させた組換えウイルス7種を作製した。これらアクセサリー蛋白は全てP遺伝子から作られるため、P遺伝子にそれぞれ改変を加え、これをinfectious cloneに挿入し、reverse genetics法により感染性ウイルスを回収した。得られた組換えウイルスのvero細胞での増殖を比較した結果、W蛋白を欠損させたウイルスは親株と同様に増殖するが、CまたはV蛋白を欠損させたウイルスの増殖は、親株より抑えられており、この2つの蛋白は、invitroでのウイルス増殖に影響を与えることが明らかになった。現在、これら組換えウイルスの病原性を、ハムスターを用いた感染実験により解析中である。これらの実験のうち、遺伝子組換え操作は日本で行ない、感染性ウイルスを扱う研究は、フランスINSERMのBSL4施設内で行なった。
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