研究課題
これまでの我々の研究の結果、レトロウイルスの発現維持に重要な機能を果たすことが考えられるクロマチン構造変換因子、Brm型SWI/SNF複合体はTat非依存的なHIV-1の発現維持能にも必須であることを明らかにした。またBrmを始めとするSWI/SNF複合体構成因子はHIV-1が活発に増殖する場である末梢血由来の活性化T細胞では一過的に発現上昇がみられ、一方、潜伏感染化するとされる静止期T細胞においてはその発現量が非常に抑えられていることから、これらの発現量の違いは宿主内におけるHIV-1の発現挙動に密接に関与していることが示唆された。またBrm欠失細胞株で見られるTat非依存的なHIV-1プロモーターの発現抑制は転写が開始しているにもかかわらず, 転写伸長が効率よく進んでいないことをRT-PCRにより明らかにした。さらにRNase Protection assayの結果からほぼ60nt近傍において、その転写が停止していること明らかにした。一方、BrmはSWI/SNF複合体としてLTRに動員されることをクロマチン免疫沈降法により示し、それに伴い転写開始点直下に形成されるヌクレオソーム-1の破壊がおこり転写伸長が回復することを観察している。以上の結果からBrm型SWI/SNFはその性状からHIV-1の転写伸長時におけるヌクレオソーム-1のクロマチン構造変換を介してHIV-1の転写に寄与していることが示唆された。
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Experimental cell Reseach (in press)