新規AB5型毒素であるSubtilase毒素SubABの、生体内受容体の検討を、6種の糖鎖合成系酵素遺伝子およびシアル酸修飾酵素遺伝子の欠損マウスラインを用いて行った。すでに、GM2-mimic合成化合物により、SubAB毒素の活性が阻害されることが報告されていたが、GM2/GD2合成酵素KOマウスは、Gb3/CD77合成酵素KO、GM3合成酵素KO、LC3合成酵素KO、sulfatide合成酵素KOなどと同様に、SubABを10 microg腹腔注入後、55-85時間で死亡した。さらに、シアル酸Neu5AcをNeu5Gcに転換するCMP-NeuAc水酸化酵素KOマウスでは、生存時間の延長傾向が見られたが、注入毒素量を減らしても生存時間の延長が得られなかった。よって、SubABの受容体が糖脂質糖鎖である可能性は低いことが示された。 Gb3/CD77は病原性大腸菌O-157のベロ毒素に対する受容体であるが、今回はLipopolysaccharide(LPS)の毒性発現におけるグロボ系列糖脂質の機能の解析を行った。LPS注入に対してグロボ系糖脂質欠損マウスは感受性の亢進を示し、MAPKファミリーのリン酸化反応の亢進が見られた。初代培養血管内皮細胞を用いて、LPS刺激に対する反応を比較検討したところ、eNOSの誘導、炎症性サイトカイン誘導において、グロボ系糖脂質欠損細胞の反応亢進が認められた。よって、グロボ系糖脂質によるLPS刺激の抑制作用が示唆された。今後、抑制作用を有する糖鎖構造の同定及び抑制機構につき検討が必要である。
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