研究概要 |
緑膿菌などの病原菌は、宿主に感染するたあ様々な病原因子を有する。我々は嚢胞性線維症患者から単離した緑膿菌から、新規の毒力因子アズリンとシトクロムc551を同定し、これらが宿主免疫担当細胞のアポトーシス(Yamada,Hiraoka他,PNAS,2004)と細胞周期(Hiraoka他,PNAS,2004)を調節し、緑膿菌感染症増悪に寄与している可能性を示した。現在我々は、毒力因子に対する宿主応答としての、膜タンパク質細胞外ドメインの切断(シェディング)に注目している。例えば、共同研究者のParkらは、緑膿菌毒力因子によるヘパラン硫酸プロテオグリカン・シンデカン1のシェディングが、感染性を決定する重要な因子であることを報告している。我々はこれまでに、Ml6ファミリーに属するメタロプロテアーゼNardilysin(NRDc)が、切断酵素TNF-α converting enzyme(TACE)を活性化することで、HB-EGF、アミロイド前駆体タンパク質など、広範な膜タンパク質のシェディング誘導に関与していることを明らかにしている(Nishi他,JBC,2006,Hiraoka他,J.Neurochem,2007)。本研究では、内因性シンデカン1の発現が高い細胞:normal murine mammary gland(NMuMG)上皮細胞にリコンビナントNRDcを加えると、シンデカン1のシェディングが誘導されることを明らかにした。また、NRDc欠損マウスの肺上皮細胞において膜結合型シンデカン1の発現量が増加していることを明らかにした。以上の結果から、肺細菌感染症においてNRDcがシンデカン1のシェディングなどを介して感染性を制御している可能性が示唆された。
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