研究課題
腸管感染病原菌は生体から種々な影響を受けていると考えられるが、具体的な因子については十分解明されていない。腸管病原体にとって最初の生体側の大きな障壁は胃酸である。神奈川現象(KP)陽性(病原菌)と陰性(非病原菌)の腸炎ビブリオ(Vp)を用いて、酸耐性を調べたところ、貧栄養培地で長時間(5時間より24時間)、低温(37℃より22℃)で培養した菌の方が酸耐性度が高いことが分かった。これは、KP陰性菌に比べ、陽性菌に顕著であった。またこの現象は、バイオフィルム形成能と同じ挙動を示した。そこでVpのバイオフィルム形成について解析したところ、Vpのバイオフィルム形成には2種類のType IV線毛 (Chitin-regulated pili:ChiRPとMannose-sensitivehemagglutinin:MSHA)が関与していることが明らかになった。これらのType IV線毛の構造がKP陽性菌と陰性菌でC末側が異なる事から、バイオフィルム形成能に差が生じ、胃酸耐性の差となったと考えられる。胃酸の他に、胆汁、デフェンシン、各種ホルモン、培養細胞の培養上清液等の作用をKP陽性株と陰性株について比較検討したが、明らかな差は認められなかった。しかし、培養細胞の培養液中の血清に、Vpの増殖を抑制する活性と促進する活性が存在し、互いに別分子として単離・同定できることを明らかにした。抑制因子としてはトランスフェリンとヘモペキシンが同定できた。促進因子としては、Mg^<++>を含む分子量3,000足らずのタンパクを単離し現在解析中である。
すべて 2007
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