腸管では定常状態においても感染時においても、樹状細胞が粘膜組織で貧食した抗原の情報を所属リンパ節に移動してリンパ球に伝達する事が知られている。以前われわれは細菌鞭毛成分フラジェリンを認識するTLR5の遺伝子欠損マウスを解析し、経口投与したマウスチフス菌が小腸粘膜固有層のCD11c発現TLR5陽性細胞を病原体運搬細胞として利用し、腸間膜リンパ節や脾臓および肝臓へ伝播することを見いだした。今回われわれは以下の小腸粘膜固有層樹状細胞の新しい機能を明らかにした。 1.フラジェリンの刺激によってB細胞をIgA産生形質細胞に分化させた。この分化には、腸管関連リンパ組織(バイエル板と孤立リンパ小節)は関与しなかった。 2.T細胞に働きかけ、フラジェリンの刺激に反応して抗原特異的なT_H-17細胞とT_H1細胞を誘導した。 3.レチノイン酸を産生し、濃度依存的にIgA産生細胞やT_H-17細胞を誘導した。 4食物抗原を取り込んで腸間膜リンパ節に移動しFoxp3 Tregを誘導した。 このように小腸粘膜固有層樹状細胞の動きや機能は複雑であるが、小腸粘膜での様々な抗原取り込みに関与する分子機構などの今後の研究が注目されている。
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