申請者はこれまでにネズミマラリア原虫(Plasmodium berghei)を対象にセントロメアのクローニング及びその機能の証明を行い、これを組み込んだマラリア原虫人工染色体の開発に成功している。本研究ではこれを用いた新実験システムの開発を試みた。本年度は人工染色体に緑蛍光タンパク質を組み込んだレポーターアッセイ系の開発を試みた。その結果、これは原虫内で正常に機能し、狙い通り、目的の原虫の生育ステージ特異的且つ安定的に緑蛍光タンパク質が発現された。次に緑蛍光タンパク質の5'上流にオオキネート特異的プロモーター及びこれに含まれるシス配列推定領域に変異を導入したものを組み込み、実際のレポーターアッセイを試みた。その結果、緑蛍光タンパク質の蛍光は変異の数に従い、徐々に減少し、転写活性の減少を定量的に測定することに成功した。これまで、マラリア原虫ではin vivoの実験においてシス配列、即ち転写調節配列が同定されたことはなく、この実験の成功によりはじめて正確に同定することに成功した。さらに同じ、蚊のステージであるスポロゾイトについても同様の実験を行い、シス配列に関する知見を得ることに成功した。以上、本研究の成果により、マラリア原虫において定量的且つ全てのステージに利用可能なレポーターアッセイが確立され、さらにこれまで同定することができなかった。マラリア原虫の転写制御機構の分子基盤の一端を明らかとすることができた。
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