申請者は既にネズミマラリア原虫(P.berghei)人工染色体を作製し、昨年度これを用いた新規レポーターアッセイシステムの開発に成功している。本年度はこれを用いて、マラリア原虫-人工染色体を宿主-ベクター系とした遺伝子ライブラリーを作製し、薬剤耐性遺伝子同定のためのパイロット実験を行った。まず、既知の遺伝子座に人工的に薬剤耐性遺伝子を組込んだネズミマラリア原虫を作製し、これよりゲノムDNAを抽出した。次にゲノムDNAを制限酵素消化後、アガロースゲル電気泳動し、薬剤耐性遺伝子が含まれると考えられるDNA断片を含むインサートDNAを調製した。続いてインサートDNAを人工染色体にライゲーションし、その後、エレクトロポレーション方により、原虫へ直接導入した。導入後、直ちに原虫をラットに接種し、その後、薬剤処理を行って、薬剤耐性遺伝子を含む人工染色体が導入された原虫のみをスクリーニングにより選択した。2回の試行を行った結果、いずれにおいても薬剤耐性原虫を選択することができ、また、選択された原虫内には薬剤耐性遺伝子が導入された人工染色体が導入されていることを確認した。以上の結果より、本実験系により、マラリア原虫-人工染色体を用いた遺伝子ライブラリーによって確実に薬剤耐性遺伝子をスクリーニングすることができることが示され、新たな実験法の開発に成功した。
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