熱帯熱マラリアゲノム情報が明らかとなった今、マラリア流行地の成人に防御抗体を誘導する原虫抗原を網羅的に同定することができれば、新規マラリアワクチン開発の突破口となると考えられている。しかし、大腸菌等既存の方法では熱帯熱マラリア原虫組換えタンパク質の網羅的な合成は非常に困難であったため、そのような試みはこれまで全く実施されてこなかった。そこで申請者らは、これまでの研究で原虫の組換えタンパク質合成への有用性が確認されていたコムギ胚芽無細胞タンパク質合成法を用いて、メロゾイト期の完全長cDNAライブラリーからプロテインアレイを作製し、少量のマラリア流行地住民血清で実施可能なハイスループットなワクチン候補抗原スクリーニング手法を開発することを目的に本研究を実施した。 1. コムギ胚芽無細胞系を用いたハイスループットなビオチン化プロテインアレイの作製 メロゾイト期原虫のプロテインアレイを作製するため、前年度に作製したcDNAクローンから、コムギ無細胞タンパク質合成法を改変してビオチン化組換えタンパク質をハイスループットに合成出来る系を用いて、ビオチン化組換えタンパク質の合成を行い、熱帯熱マラリア原虫メロゾイト期のタンパク質約100種類以上小スケールで合成した。 2. アルファ・スクリーン法を用いた新規メロゾイト抗原のスクリーニング 昨年度に確立した高感度、小スケール、ハイスループットな抗原抗体反応測定系を用いて、上記メロゾイト期タンパク質100種類以上と、マラリア免疫血清約20人分を用いて、新規抗原のスクリーニングを行った。その結果、多くのマラリア免疫血清と反応する抗原タンパク質を同定することに成功した。
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