研究課題/領域番号 |
19041054
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
福井 宣規 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (60243961)
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研究分担者 |
錦見 昭彦 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (70404019)
實松 史幸 九州大学, 生体防御医学研究所, 非常勤研究員 (80381094)
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キーワード | DOCK2 / Rac / HIV / Nef / 形質細胞樣樹状細胞 / ヘルパーT細胞 |
研究概要 |
AIDSはHIV感染によって引き起こされる免疫不全症であり、有効なワクチンがなく、先進国においても感染者が急増していることから、大きな社会問題となっている。DOCK2は線虫のCED-5、ショウジョウバエのMyoblast Cityの哺乳類ホモログで、免疫系特異的に発現するRac活性化分子であるが、最近HIVのNefを強制発現したJurkat T細胞株において、DOCK2がNefと複合体を形成することが報告された。それ故、Nefによる免疫異常にDOCK2-Racシグナルが関与する可能性が考えられる。 この可能性を検証するため、本年度はNefをコードするアデノウイルスベクターを構築し、コクサッキーアデノウイルス受容体(CAR)を発現するDOCK2欠損CD4+T細胞と野生型CD4+T細胞に遺伝子導入を行った。このシステムを用いることで、DOCK2の発現の如何に関わらず、ナイーブCD4+T細胞の約7割にNefを発現させることが可能であった。Nef発現により、野生型CD4+T細胞でもDOCK2欠損CD4+T細胞でもCD4のdownregulationが観察されたが、前者と比較して後者ではこのdownregulationが障害されていた。一方、AIDS患者においてCD4+T細胞に加えて形質細胞様樹状細胞(pDC)が著減することが報告されている。この観点からpDCに関しても研究を進め、Nefの発現によりpDCの遊走が抑制されること、及びDOCK2がpDCの遊走に不可欠なRac活性化分子であることを明らかにした。さらに、T細胞受容体の下流で誘導されるDOCK2-Racシグナルが、微小管動態を介してIL-4受容体の細胞内輸送とタンパク質分解を制御することで、Th2細胞への分化を抑制していることを明らかにした。このことから、AIDSにおいて認められるヘルパーT細胞分化異常は、一部にはDOCK2を介したものである可能性が示唆された。
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