感染時において免疫システムは病原体を排除しようとする正の応答と同時にそれを抑制する負の応答も生じる。これまでの研究はいかに正の排除システムを機能させるかに焦点が置かれてきたが、負の制御システムに着目する研究は少なかった。本研究は、負の制御を担う制御性T細胞(Treg)、Tregを分化誘導する免疫抑制性サイトカインTGFβ、免疫賦活化を抑えるシグナル伝達分子STAT3とその負の制御分子SOCS3に着目し、これら免疫応答における負のファクターが原虫(L.major)感染にいかに影響を及ぼすのか明らかにする。 これまでにT細胞でSOCS3が欠損すると抑制性Th3(Foxp3+Treg)細胞の誘導が亢進して免疫応答が低下し、L.major感染が増悪化することを見いだしているが、平成19年度は、逆にT細胞でSOCS3の発現が亢進しているTgマウスでL.major感染を試みたところ、予想外にも、このマウスでも感染の増悪化を認めた。これらの結果は、効果的なL.majorの排除には細胞内シグナル制御分子SOCS3が適度な量とタイミングで制御されていることが不可欠であることを示唆する。この感染の増悪化は感染後にヘルパーT細胞からのIL-4産生が上昇しTh1応答によるマクロファージ活性化が抑制されていることが原因だとわかったが、なぜSOCS3過剰発現T細胞はIL-4産生が亢進するのか、その分子機序は不明である。次年度は、その分子機構を解明する為に、SOCS3Tg-T細胞の様々なサイトカインに対する応答性とシグナル伝達分子の活性化を調べる。一方、L.major感染後のTregの経時的変動についてFoxp3を指標に調べたが、これまでの報告に反して、大きな変化は認められなかった。
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