研究概要 |
肺コレクチンのSP-AとSP-Dは,生体防御レクチンとして呼吸器の自然免疫生体防御を担っている。 本研究の目的は,肺コレクチンを介するマクロファ一ジ細菌貪食とコレクチン・細菌相互作用の分子機構を解明し,感染現象ににおける宿主分子「肺コレクチンとその受容体」の機能を明らかにすることである。以下に本年度の研究成果を要約する。 1.肺コレクチンのSP-AとSP-Dは,濃度依存性に,また,カルシウム依存性に非定型抗酸菌(M.avium)に結合した。結合阻止実験により,SP-Dのリガンドはリポアラビノマンナンであると考えられた。SP-Aのリガンドは,M.aviumの脂質画分に存在すると考えられるが,現在同定中である。さらに,肺コレクチンは,M.aviumの凝集活性を有していた。SP-Aに比較してSP-Dの方がより強力な凝集活性を有しており,その十字架様の多量体構造が重要であることが示唆された。 2.SP-AとSP-Dは,カルシウム依存性にレジオネラ(L.pneumophila)に結合し,L.pneumophilaの培養液中での増殖を有意に抑制した。さらに,肺コレクチン存在下でL.pneumophilaをマクロファージに貪食させ,マクロファージ細胞内における細菌増殖を調べると,SP-AとSP-D存在トで貪食させた場合にはL.pneumophilaの細胞内増殖が有意に阻止され,コントロールに比較して400-800倍の抑制率であった。L.pneumophilaは,細胞内寄生菌として,特に高齢者や免疫不全状態での発症が社会的にも問題となっているので,肺コレクチンの抗L.pneumophila因子としての生物活性は注目される。 3.貪食受容体のスカベンジャー受容体(SR-A)に対する結合蛋白質を,酵母two-hybrid法およびアフィニティ精製後の質量分析により,同定し,microtubule-binding proteinのHook3であることが判明した。Hook3のC端側領域(Val614-Ala717)の陽性荷電アミノ酸残基がSR-A細胞質ドメインの陰性荷電アミノ酸残基(Glu12,Asp13,Asp15)と相互作用することによる結合であることが示された。
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