肺コレクチンのSP-AとSP-Dは、生体防御レクチンとして呼吸器の自然免疫生体防御を担っている。本研究の目的は、肺コレクチンを介するマクロファージ細菌貪食とコレクチン・細菌相互作用の分子機構を解明し、感染現象における肺コレクチンの機能を明らかにすることである。以下に今年度の研究成果を要約する。 1. 肺コレクチンは、レジオネラ菌の増殖をカルシウム依存性に抑制した。また、レジオネラ菌由来リボ多糖(LPS)は、肺コレクチンのリガンドであり、LPSの添加によって肺コレクチンによるレジオネラ菌増殖抑制効果が失われたので、肺コレクチンによるレジオネラ菌増殖抑制作用には、コレクチンとLPSとの相互作用が重要であることが示唆された。 2. IV型分泌機構によるレジオネラ菌のマクロファージ傷害活性(pore-forming activity)について、肺コレクチン存在下でレジオネラ菌をマクロファージに感染させると、傷害細胞膜を有するマクロファージ数が有意に低下していた。このことは肺コレクチンがレジオネラ菌によるproe-forming activityを抑制することを示している。 3. レジオネラ菌を30分間感染させたマクロファージを0〜4日間培養したところ、感染直後のマクロファージでは肺コレクチン存在下での感染で有意に多くの菌がマクロファージに取り込まれていたが、感染2-4日で、マクロファージ内で生存している菌数は有意に低下していた。このことは、肺コレクチンがレジネラ菌の細胞内増殖を抑制することを示している。 4. 酸性で蛍光を発するpHrodo標識レジオネラ菌を肺コレクチン存在下でマクロファージに感染させたところ、蛍光陽性マクロファージ数が有意に増加していた。このことは、肺コレクチン存在下ではレジオネラ菌含有ファゴソームがリソソームと融合し、レジオネラ菌の酸化が促進されたことを示唆している。
|