研究概要 |
ボツリヌスC型Hc(重鎖C末端領域)およびD型Hcの受容体認識機構について解析を行い,受容体認識に関わるアミノ酸残基を明らかにした。C型Hcには他型にも存在するガングリオシド結合領域が一部保存されており,これらアミノ酸残基の点変異体から,W1257(1257位のトリプトファン),Y1258,G1270,H1282が受容体結合に関与していることがわかった。特にH1282はC型にのみ特異的に存在するアミノ酸残基であり,ガングリオシドへの親和性を高める要因の-つであると考えられる。一方,D型については,結合親和性の異なる2種のHc(003-9株由来と1873株由来)に着目し,これらのキメラ変異体,点変異体を作製した。結合活性を比較検討した結果,003-9株由来毒素分子内の1113番目から1138番目の領域が結合親和性を高めるのに重要であることがわかった。この領域内において,2種のHc間では6残基の違いが認められる。そこで,003-9株由来毒素のK1117(1117番目のリジン),S1127,I1129,K1135を1873株由来毒素の対応するアミノ酸残基に点変異させた結果,K1117の変異により結合活性は顕著に減少した。一方,S1127,I1129は結合活性に影響しなかった。 K1117 は1873株由来毒素ではEに置換しており,電荷が正反対になっていることから,003-9株由来毒素分子内のK1117の正電荷が受容体への結合親和性に重要であると考えられた。これまで,他の型では受容体認識に関与するアミノ酸残基はC末端側に局在していると報告されているが,D型では他型とは異なり,C末端から約100残基以上N末端側に,結合親和性に関与するアミノ酸残基が存在していることが明らかとなった。現在,C型,D型Hcの結合様式をより明確にするため,リボソームを用いた実験系の構築を進めている。
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