研究概要 |
百日咳菌は長期間にわたる痙變性咳嗽を惹起するが,その感染機構については未だ不明な部分が多い。また,百日咳菌のモデル菌株である気管支敗血症菌を用いた実験から, III型分泌装置に依存した気道上皮細胞への長期定着が報告されている。本研究はIII型分泌装置を介して宿主に移行するエフェクターの機能を分子レベルで解析することで,ボルデテラ属細菌の感染機序,特に気道における長期定着機構を分子レベルで明らかにすることを目的としている。申請者らは気管支敗血症菌からIII型エフェクターであるBopCエフェクターを初めて同定し,このエフェクターは樹状細胞に細胞傷害を誘導することで貪食作用に抵抗性を示すことを明らかにした。一方. III型分泌装置に依存して抗炎症性サイトカインであるIL10の過剰発現が報告されていたが,BopXエフェクターがIL10産生を正に制御していることをDC 2.4培養細胞を用いた実験にてから明らかにした。 BopxとBopCのin vivoでの機能を解析するために,BopX, BopCについてそれぞれ欠損株を作製し,感染実験を行なったところ気管支敗血症菌の野生株感染では全てのマウスが死亡したのに対して,BopX, BopC欠損株感染では全てのマウスが生存していた。このことから,これらエフェクターは病原生発揮に必須な病原因子であることを明らかにした。BopXの機能をさらに詳しく解析するために,BopX遺伝子をクローニングした発現ベクターをDC 2.4培養細胞に導入したところ,NF-ΚBの核移行が阻害された。以上の結果,ボルデテラ属細菌の気道への長期定着には,少なくとも2つのエフェクターが関与し 1)BopCが樹状細胞やマクロファージからの貪食作用に対して抵抗し 2)BopXがIL10発現を誘導することで好中球浸潤を積極的に抑制する,ことを明らかにした。
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