HIV-I Gag蛋白はキャプシド構成分子であり、単独で発現させるとウイルス様粒子(VLP)を形成し、それ自身が出芽(budding)する。小胞輸送蛋白複合体(ESCRT)の上流に位置する輸送蛋白HrsがEGF受容体等の分解制御に関わること、同じくESCRTに含まれるTsg101(ESCRT-I)である及びVps4がHIVの出芽に重要であることが報告された。Gagはユビキチン化修飾を受けることが知られており、これまで詳細不明であった「ユビキチン化されたGagの認識・輸送機構」の存在も想定された。Hrsはユビキチン結合ドメイン(UIM)を持つほか、エンドソーム上にTsg101をリクルートする機能があることから、Gagの認識・輸送にHrsが関与する仮説を立て、Gagの細胞内輸送及び分解に果たすHrsの役割を検討した。siRNAを用いHrsをノックダウンしたHeLa細胞にHIV-I gagを遺伝子導入し、細胞内のGag蛋白量及び培養上清中のVLPをウエスタンブロッティング、ELISA法にて検討した。その結果、Hrsノックダウンにより、細胞内のGag蛋白量が顕著に増加し、培養上清中のVLP量も有意に増加した。ライソソーム阻害剤存在下で細胞内Gagの分解を調べたところ、Hrsノックダウン細胞と同様に分解が抑制された。共焦点顕微鏡下で、GagとCD63の共局在がみられたが、HrsノックダウンによってGagとCD63の共局在が顕著に増加した。一方、Hrsノックダウン時に蓄積するGagはSNARE蛋白のうちSTX6およびSTX8によって有意に蓄積が解除された。以上の結果から、1)Gag蛋白はライソソームで分解されること、2)分解にHrsが必須であること、3)SNAREによってGagがライソソーム分解に誘導されることがわかった。
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