研究概要 |
HIVの粒子形成に関与する宿主因子を同定し、新規の治療標的を明らかにすることを目的とした。とりわけHIV-1 Gagタンパク質の機能的翻訳後修飾に関与する細胞側因子、特にキナーゼおよびユビキチンリガーゼの同定を行った。小麦胚芽無細胞タンパク質合成系により合成されたヒトキナーゼライブラリーおよびユビキチンリガーゼライブラリーを用いて、ウイルスタンパク質のリン酸化またはユビキチン化に関与する細胞側因子を、リン酸化部位結合酵素Pinlを分子プローブとしたハイスループット(HTP)アルファスクリーンにより決定した。またこれらの技術を用いてレトロウイルス構造タンパク質またはアクセサリータンパク質を翻訳後修飾するホスト因子の同定も合わせて行なった。 発現クローニング法を含むさまざまな手法を用いて蛋白因子の同定につとめ、SOCS-1がHIV感染を亢進させること、atypical protein kinase C (PKCζ)がGagのp6のPTAP領域周辺をリン酸化し、宿主のESCRT系タンパク質との相互作用を制御することにより、ウイルスの粒子形成に必須の因子であること、SRPとそのキナーゼがHIV-1の複製に重要であることなどを報告した。さらにPinlとA20がIRF3活動を負に制御しRNAウイルスを抑制すること、などを見出した。一方、新しい阻害剤の開発研究では、低分子CXCR4アンタゴニストKRH-1636の誘導体の中から,より有望なKRH-2731を見出した。 同定された因子については細胞レベルおよび個体レベルにおけるウイルス複製への役割や病原性発現機構との関連について検討し、宿主個体のHIV-1に対する応答機序制御機構の解明をめざすと共に同定された因子を標的とした阻害剤スクリーニングを行っている。
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