ポリオウイルスが急性脳炎・脊髄炎を引き起こすのはウイルスが感染した細胞や組織によってIFN応答性が異なっていることが原因の一つである。ポリオウイルス感染後神経系組織のIFN応答は鈍く、非神経系組織の応答は素早く、強い。最近の知見によってIFN産生に至るウイルスRNAの検知は細胞内RNAセンサーであるRIG-I、MDA5や細胞外もしくはエンドソーム内RNAセンサーであるToll-like receptor (TLR)-3、TLR-7によってなされており、これらのセンサーは特定の細胞で機能する防御戦略がとられていることが示されている。したがってポリオウイルス感染時に細胞・組織にウイルスが感染している、あるいは検知されていることが考えられた。そこで我々はポリオウイルス感染時にどのようなセンサーが関与しているかをノックアウトマウスを用いて調べた。昨年度までにRIG-IやMDA5はポリオウイルス感染では最も重要な経路でないことが判明しているので、今年度はTRIFとMyD88の影響を調べた。ポリオウイルス感染時には主に脾臓でIFNが産生されるが、TRIF KOマウスではIFNαやISGの誘導レベルが低下しており、種々の組織でのウイルス増殖も増し、マウス個体の生存率も低下した。したがってポリオウイルスの感染の検知は主に脾臓に存在する細胞で行われ、しかもTRIFに依存する経路が重要であることが判明した。さらに細胞種を同定し、ポリオウイルスはこの経路で検知されてしまうメカニズムを解明することが重要であると考えられる。
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