研究概要 |
C型肝炎ウイルス(HCV)感染症における大きな特徴は,感染者のほとんどが持続感染化することと,それに伴って起こる肝発癌である。持続感染が成立する理由の一つとしてHCVに対して宿主側が免疫寛容状態になっていることが推測され,持続感染機序の解明にはC型肝炎発症動物モデルを用いて解析を行う必要性が示された。HCVの持続感染成立機序,慢性肝炎・肝硬変・肝癌への推移機構解明の為に,病態モデルのトランスジェニック(Tg)マウス作製が行われてきた。HCV感染により近いモデルとして,任意の時期にHCV遺伝子をスイッチング発現することができるCre/loxP recombinant systemを用いたHCV構造蛋白質領域発現Tgマウス(CN2マウス),HCV全長遺伝子発現Tg マウス(Rz マウス)が樹立された。このマウスとCreを誘導するMx-Creトランスジェニックマウスを交配することにより,任意の時期にHCV遺伝子をスイッチング発現するトランスジェニック(Cre/loxP/HCV-MxCre Tg)マウスを作製した。MxCre Tg マウスでは,初回投与後0.5日目からHCV core蛋白質の発現が認められ,7日目で915pg/mg(肝総蛋白質量)とピークに達した。その後,減少傾向にあるものの,21日目でも435pg/mgと発現が持続されている。さらに,この発現は6ケ月を過ぎても同レベルで維持されていた。HCV蛋白は完全に排除されることなく,持続的に発現がみられ,慢性肝炎の症状を呈した。すなわち,スイッチング発現システムを樹立したことにより,受動的に免疫寛容が成立し,HCV感染に似た免疫反応状態をつくることに成功した。
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