プリオンはタンパク質性の感染因子である。感染の源は、タンパク質の構造変換である。プリオンでは、分子間βシートよりなるアミロイド様構造が増殖・伝播することで感染していくことが知られている。アミロイドは線維構造を形成するが、その線維がプリオンとして増殖していくためには、線維自身の自己触媒的な成長に加えて、線維の分断による増殖が必要である。 プリオンの増殖の分子機構の詳細はまだ明らかではないが、出芽酵母のプリオンではHsp104というシャペロンがプリオンの次世代への伝搬に必須であることが証明されている。そのメカニズムとして提唱されているのは、Hsp104は熱変性によるタンパク質凝集をATP依存でほぐす能力があるAAAシャペロン(ClpBホモログ)なので、Hsp104はプリオン線維をATP依存で分断することによってプリオンの増殖を促進しているのではないかというものである。 そこで本研究では、Hsp104がどのようなメカニズムでプリオン伝搬に関与するのかを、申請者がこれまでに確立してきた酵母プリオンの1細胞観察(in vivo)と1分子蛍光イメージング(in vitro)を組みあわせることで明確にすることを目的とする。 19年度はHsp104に蛍光蛋白質を結合させたHsp104-mCherryの構築と細胞内での機能確認を行った上で、Hsp104-mCherryとSup35-GFP間の相互作用を蛍光相互相関分光法により検出することに成功した。
|