1.バクテリオロドプシン(bR)の脱・再結晶化過程の観察 ヒドロキシルアミン存在下で緑色レーザー光照射による紫膜の脱結晶化のリアルタイム観察を行った結果、3量体の2次元結晶からの脱離が起こり、その3量体欠陥を基点として2次元結晶の崩壊が始まることが分かった。このことからバクテリオロドプシンからレチナールの解離したバクテリオオプシンは3量体構造を維持したままで、タンパク-脂質間の相互作用が弱くなることで脱結晶化が進行していることが分かった。一方、レチナール添加による再結晶化の観察も試みた。細胞外側では、再結晶化がある程度進行した小さな島状紫膜が時間と共に集合していく様子を捉えることができた。しかしながら、細胞膜側の再結晶化と細胞外側でもバクテリオロドプシンが再結晶を行う初期状態を観察することは出来なかった。これは、測定時に探針が試料系を乱しているためであると考えられるため、低振幅振動で試料への影響を出来るだけ小さくして測定を進めていく必要がある。 2.ATPaseの回転観察の試み 高速AFMによるATPaseの回転運動観察を試みた。形状の非対称性が大きいと思われるV0-V1を試料として用いた。まず第1段階として、試料のマイカ基板への最適な固定方法を検討した。その結果、マイカをアミノシランで処理し、その後グルタルアルデヒドを介してAB-NTAを固定し、Ni処理することで可溶化、再構成試料共にマイカ基板に固定できることが分かった。その後、回転運動の観察を試みたが明瞭な回転を観察することは出来なかった。回転しているがAFMで捉えられない、AFM観察でタンパク質の構造が破壊されている等の原因が考えられる。
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