1. バクテリオロドプシン(bR)の構造変化の観察 : 光吸収サイクルが野性型bRよりも遅いD96N変異体を試料として、緑色レーザー光照射時の光吸収に伴う構造変化の観察を行った。細胞質側では光照射に同期してAFMで観察されるモノマーの輝点が約0.7nm変化することがわかった。光励起された分子の寿命を解析した結果、AFMで観察された構造変化は、基底状態からN中間体への遷移時に発生すると考えられている、EFループの移動であることが分かった。一方、このような構造変化は細胞外側では観察されなかった。また、EFループの移動により隣り合ったbRトライマー内のモノマー同士が相互作用した結果、励起分子の寿命が変化することが分かり、従来から分光法により議論されてきた光吸収サイクルの協同性が構造変化に起因することを明らかにした。 2. ロドプシンの会合状態の観察 : 高速AFMでロドプシンの高分解能な動態変化過程や生理過程を捉えるため、AFM観察に適したロドプシン試料の調整としてウシロドプシンの抽出及び天然脂質膜へ再構成を行った。その結果、再構成時の脂質割合や界面活性剤の割合などの条件を変える事で2次元結晶の結晶化度が変化する事が分かった。また、天然の円盤膜中に存在するロドプシンでも、4℃で長時間インキュベーションを行うと2次元結晶化し、ダイマー構造をとることが確認できた。 3. ATPaseの回転観察の試み : リジン基で修飾したF1モーターを用いることで、アミノシランおよびグルタルアルデヒド処理したマイカに比較的容易に固定できることが分かった。F1のYサブユニットに標識としてストレプトアビジンを固定し、ATP加水分解による回転運動を観察することができた。しかしながら、AFM観察によりYサブユニットが容易に引き抜かれてしまうことも判明し、再現性よく回転観察を行うところまでは達しなかった。
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